先日ご報告した通り、無事にカナダに到着しました。
機内では『パラサイト 半地下の家族』と『ジョーカー』という、今年を代表するオスカー作品でありながら(コロナウイルスの影響もあり)劇場で見逃していた2作品を観ることができました。
以下、ネタバレを避けつつ両作品に共通する点、各作品について、素人のレビューを記します。タイトルの勝間和代さんについては、最後に書きます。
共通するテーマと“自分の立ち位置”
両作品とも、ネットやSNSに加えて、友人知人からの評判も上々。ただし「鑑賞後は気分が落ち込む」との注意も共通していました。わりと感受性が強い方なのですが、2作連続して鑑賞した結果、メンタル的には大丈夫でした!
その理由は、自分で言うのも残念なのですがこれらの作品で描かれているテーマを本当の意味では理解できていないからだと思います。
前評判でも、
本作を観て『あぁ面白かった』で終わる人と、言い様のない絶望に苛まれる人とがいるだろう。
そしてその事実こそが、映画で描かれている“分断”そのものである。
という論旨を目にしました。
自分が"the rich"であるとは思っていません。が、確実に恵まれている側の人間でしょう。幼少期から決して裕福ではなくとも、生まれてから貧困とは無縁で生きて来られた。
両作品で描かれている格差の両側にグラデーションはあれど、皆自分をどちらかサイド寄りに位置付けて鑑賞したはずです。それがどちら側だったかによって、感じ方が変わるのではないでしょうか。
前置きが長くなりましたが、それぞれの作品の感想に移ります。
パラサイト:アカデミー賞は納得
まず、最初に観た『パラサイト 半地下の家族』(以下パラサイト)について。
結論から言うと、個人的な評価はパラサイト>ジョーカーです。5点満点評価で言うと、パ4.5/ジョ3.5ぐらい。なぜかと言うと、パラサイトの方がエンターテインメントとして全部盛りだからです。
ポスター写真に映っている足から「なんか怖そう」というイメージが先行していましたが、前半はコメディータッチのシーンもあり、中盤のある出来事により、後半のスリラータッチにガラッと雰囲気が変わります。全体を貫く貧困格差という大きなテーマに加えて、異なるエンタメ要素を巧く盛り込み纏め上げた脚本がオスカーを受賞したことに、強く納得します。
また潔癖気味の私、序盤でキム家の半地下住居の描写がずっと続くとキツいなぁと思っていたのですが*1、その後の舞台はパク家の豪邸がメインなので目には優しいです。パク夫人と娘・ダヘも眼福…。
結末が分かった上で、再度鑑賞したいと思うのもパラサイトの方です。特にラストシーンでキム家の息子・ギウが医師と話すシーンのメッセージ性は、初見で理解できなかった*2のでもう一度観たい。
ジョーカー:ホアキン劇場
続いて『ジョーカー』について。
パラサイトと比較するとなおさら常にダークだったという意味で、モノトーンな作品だと感じました。
内容としては分かりやすく、次に起こることは概ね予想がつきます。本作をここまでスターダムにのし上げたのは、アカデミー賞での評価通り、主演ホアキン・フェニックスの怪演に他ならないでしょう。あの“笑い”の裏に張り付く(病気とは別の)悲哀と闇が演技だとは。終盤の彼の“ダンス”にも同じ感情を抱きました。
「誰しもジョーカーになってしまう可能性がある」というメッセージとともに、この映画が悪を正当化してしまうことにはならないかな?と思いました。だからこそ、NYでは本作公開時に厳重警戒態勢を敷いたとか、子供連れで鑑賞しないよう呼び掛けたといった現象が起こったのでしょう。
しかし、こういった格差と分断が存在することに目を背け続けることは、それらが消えることを意味しない。むしろ、暴発寸前のテンションを高めかねない。そんな脆い地盤の上で成り立つ資本主義社会を、再認識させられました。
食と健康と貧困
上記2作品を観た後、空港での乗り継ぎ待ちの最中に勝間和代さんの『勝間式 食事ハック』を読みました。
勝間和代さんの「勝間式食事ハック」読了📚最新刊の「超ロジカル料理」とちょっと前の「超ロジカル家事」も読んでて内容重複するかなぁ?と迷ったのだけど、ロジカル料理のまさに理論編という位置付け。食と健康という領域を超えて、資本主義や貧困問題にまで斬り込む、読み応えのある一冊だった。
— Casey@外資系OLの眼鏡 (@lifeisajanico) 2020年5月14日
勝間さんの最新刊『ラクして おいしく、太らない! 勝間式超ロジカル料理』の理論編といった位置付けで、筋トレ同様に理屈が腹落ちすることで、さらに実践したくなりました。つまり、ホットクックとヘルシオを買いたいという意味なんですが…カナダで使えるのかな。
これまで勝間さんが食事にこだわるのは、「おいしいものが食べたい」という(意外と?)ゆるふわな願望と、ご自身でも仰っている味覚過敏が理由だと思っていました。でも『勝間式 食事ハック』を読んで、彼女はもっとずっとその先を見ていると実感しました。
食の正しい知識を得られるというフードリテラシーは、資本主義に搾取されないための武器であること。そして加工食品をはじめとした食品産業が、構造的に貧困ビジネスであるという主張。
貧困というキーワードで、前述の映画2作品と、食事ハックの本が結び付いたのです。ただし異なる点は、前者の貧困格差は「決して埋められない溝」として描かれているのに対して、後者のそれは「一つずつ出来ることから未来を変えていける」ものであること。後者が正しくあってほしい、というのはやはり恵まれる者の傲慢なのでしょうか。
質の高い映画&読書体験
拙い感想ではありますが、話題になる作品には意味があると再認識した映画鑑賞体験でした。勝間さんの本に関しては、また自分なりに試した内容なども含めて記事にできれば。
ではでは!