イブ、クリスマスと連続ファミリーディナーを無事に終え、私の本当の冬休みが始まった…(大晦日ディナーもあるけどな!)🙌
— Casey (@lifeisajanico) December 26, 2022
富豪だったらいま一番したいことは、スラムダンクを劇場で観るためだけに一時帰国🇯🇵✈️
遂に、夢に見た映画『THE FIRST SLAM DUNK』をカナダプレミアで観てきた。
感想は一言、最高でしかない。
現時点(2023年8月2日)で、日本では2023年8月末に終映予定、北米やフランスなどで7月末から順次公開中。
よってこの記事は、以下の二つのメッセージを伝えることを目的として書いている:
- 日本在住の未見の方→とにかく今すぐ劇場へ足を運んで観て!
- 海外在住の方→居住国で公開されるなら、ぜひ劇場へ足を運んで、日本が誇るエンタメを応援しよう!
タイトルにもある通り、前半はネタバレなし、後半はネタバレありで、この映画の推せる点を紹介していく。
なお、以降『THE FIRST SLAM DUNK』はSNS上での愛称ザファと呼ぶ。
【ネタバレなし】あなたがこの映画を観るべき3つの理由
逆に「なぜ観に行かないのか?」と考えた際に出てくる理由に回答してみたい。
①配信や円盤化を待つ
予告でも垣間見られる通り、ザファには3DCGが用いられている。
劇中には当然バスケシーンがあり、誇張抜きで本物の試合を観戦しているかのような躍動感と臨場感が実現されている。
また、ハリウッドではなく日本ならではと言うべき視覚・聴覚演出には鳥肌が立ち、息を呑んだ。
大画面・大音響で味わってこその体験を、ぜひあなたにも味わってほしい。
そもそも、本作は配信も円盤化もしない可能性すらある。
ザファを観るにあたりKindleで原作を読み直そうとして、紙の本しかないことを知り衝撃を受けた。
これは、井上雄彦先生のこだわりであることは間違いない。
その文脈から、ザファもいま劇場でしか観られない「としたら」?
だからこそ異例のロングラン上映をしているのだ「としたら」。
観ないという選択肢はないだろう。
②原作を読んでいない
ザファが最も刺さるのは、原作を昔読んでキャラや話の流れは覚えているけど、細かい部分はうっすら忘れてる人だと思う。
ただ、原作未読で鑑賞した人からも「全然大丈夫!すごく楽しめたよ!!」という感想を聞いた。
ネタバレありパートで触れるが、原作未読の人も楽しめる話の作りになっていながら、原作ファンにだけ伝わるという仕掛けが散りばめられており、とにかく全方向に愛の溢れた作品なのだ。
よって、未読の人はそのままで良いし、既読の人も読み直さずに観に行った方がいいまである。
③アニメが苦手
これに関しては、声を大にして言いたい。
そういう人にこそ推せる!!
私自身も苦手とする日本アニメの独特なノリが、ザファでは極力排除されている。
これも監督・脚本を務めた井上先生のこだわりであり、声優さんには「普通の高校生が話すように」との指示があったそうだ。
また、北米市場に乗り込んできたザファのポスターを見て、「これは萌え絵を忌避してアニメを見ない層にも受け容れられそう」だと感じた。
過剰な演出をせずともエンタメとして成立するのは、画力と技術、そして構成のなせる技だ。
ザファを観なくていい人
TVアニメ版声優陣の大ファンと、3DCGにどうしてもアレルギー反応がある人ぐらい?
それぐらい、全人類におすすめできる。少なくとも、1回観ておいて絶対に損はさせない。
***
それでは、映画を観た人に向けたネタバレ感想に入っていく。
【ネタバレあり】この時代に生きてて良かった
ここからは感情の制御が難しいため、ランダムに感動ポイントを列挙していく。
オープニングのメンバー登場シーンが…
カナダ公開まで必死にザファ情報を回避してきたのだが、鑑賞直前にうっかり例のオープニングシーンの内容ネタバレを踏んでしまった。
が!!それでもあのシーンは「ア゛ァ゛ーーーーー!!!」ってなったし、もし不意打ちであれが来たら逝ってしまってたかも知れない。
また、山王戦という情報は知っていたのだが、日本公開直後の観客はそれさえも知らずに映画が始まり、あのシーンで初めて知ることになったら………ロックすぎる。
試合シーンのスピード感
リョータのストーリーと山王戦の試合が交互に折り重なっていく構成は、それぞれの最初と最後がちゃんと繋がっていて、効果的だった。
何より試合シーンの緊張感がすごすぎて、間々で挟まれる回想シーンがなかったら、アドレナリン過多で体力が保たない。笑
実際に試合を観ているような感覚は、3DCGやモーションピクチャー等の技術はもちろん、バスケのスピードを最優先した=アニメ的な演出や必要最低限以上の説明を捨てるという、井上先生の美学によるものだろう。
神は、何を捨てるかに宿る。
お兄ちゃんミッチーというパワーワード
中1リョータと中2三井が「既に出会っていた」という、新規エピソード。
突然の爽やかお兄さんの登場に、「あれっミッチーはグレてたからロン毛のはずで、じゃぁこれはミッチーに激似の人?エッエッッ」と時系列がバグっているうちに、友達にみっちゃんと呼ばれて去っていった。
次回以降、あのキラキラお兄ちゃんミッチーが登場すると分かっていて、果たして心臓が保つだろうか。リョーちんが団地のおばさんに追い出される辺りから身構えなくては。
井上先生の推し三井説
原作では、印象的な個人エピソードがアヤちゃんぐらいだったリョータ。彼を主人公に据えたのは、とても良かった。
ゴリにもスポットライトが当たるし、木暮も随所で締めてくれる。
一方で、花道と流川ファンにとってザファは物足りなく感じるかも知れない。
そう考えると、原作でも映画でもしっかり目に描かれている三井って、井上先生にとって思い入れが強いキャラなんだろうと想像する*1。人間臭いしなぁ。
原作ファンにだけ聴こえるセリフ
鑑賞後にレビューを調べていて、あのクライマックスシーンで花道が「左手は添えるだけ…」を言ってなかったと知って驚いた。
英語字幕で観たからより明らかなはずなのに、完全に心の中であのセリフを補完していた。
他にもゴリの「このチームは最高だ…」とか、木暮の「2年間も待たせやがって…」とか、原作を読んでる人ならきっと補完してくれると信じて、セリフやナレーションを入れない。
井上先生の愛が全方向に溢れている。
北米市場におけるザファの考察
せっかく海外で鑑賞したからには、カナダで観るザファという視点も紹介したい。
ドラゴンボールやナルト、鬼滅の刃に呪術廻戦と、海外人気が高い漫画・アニメの中で、スラムダンクはそこまで知名度が高くないように思う。
ザファがアジアでも大人気と聞いても、正直カナダで上映されるとは期待していなかった。
しかし、そもそもアメリカ発祥であり、井上先生が奨学金という形で日米交流をサポートしているバスケットボール。そのスポーツを描いた、日本最高峰の漫画であるスラムダンク。
北米市場を目指していないはずがなかった。少なくとも、私はそう感じた。
ネタバレなしパートでも触れた通り、萌え絵(オタクっぽいというだけでなく、ロリコンを連想させるため日本以上に忌避する人が多い)とは対極的な、画力の高さありきのリアルな造形。
男5人のバスケ映画(もちろん山王やベンチ、他のキャラもいるけど!)という、メッセージが明確でシンプルなビジュアル。
そう言えば劇中、彩子の「男でしょ!」というセリフが英語字幕では、確か "Show what you've got!" に置き換わっていた。こうした配慮は当然の北米市場だからこそ、近年のポリコレ路線に辟易している層がいるのも事実だ。そういう人にとっても、本作は純粋にスポーツドラマとして楽しめるだろう。
【記事タイトル回収】30〜40代にとってのトップガン
ザファ鑑賞後はあらゆる感情が押し寄せたが、そのうちの一つに既視感を覚えた。
昨年、映画『トップガン マーヴェリック』を観た時の感情だ。
未履修だった前作『トップガン』を直前に観てから劇場に行ったこともあり、親子や世代交代といった時間軸を含め楽しむことができた。
同時に、私でさえそうした見方ができるのだから、トップガンと共に年を重ねた世代にとっては感無量なんだろうなぁと思った。
漫画連載終了から26年の時を経て映画化されたスラムダンク。幼少期や多感な青春時代に原作漫画やアニメに触れてから、一緒に歳を重ねたのが今の30〜40代。
まさに俺たちのトップガンだ。
最後に〜解釈は添えるだけ〜
いろいろと語ってきたが、最後に本作のタイトル『THE FIRST SLAM DANK』の意味について、私なりの解釈を添えて終わりとしたい。
あの痺れるオープニングと、それに呼応するようなエンディングに象徴される通り、井上雄彦先生の原点であり終着点はやはり漫画なのだろう。
ザファは原作未読の人でも楽しめる映画だと述べた。
ただし、鑑賞後に原作を読むことを前提として。というのが私の意見だ。
国内外問わず、この映画でスラムダンクに触れた人が、一人でも多く原作漫画を手に取ること。
彼らにとって最初のスラムダンクであり、原作ファンにとっても再びスラムダンクに出会い直せる作品。私はそう受け取った。
主人公を変えてTHE SECOND, THIRD...を期待する声もあるようだが、私はザファが最初で最後の映画でいいし、それがいい。制作に掛かった膨大な時間と労力を考えても、ほぼ自明だろう。
***
さて私はと言うと、新装再編版全20巻を日本から取り寄せようか、本気で検討中である(『re:SOURCE』は既にポチった)。
繰り返しになるが、日本では夏の終わりの8月31日に終映予定の本作。
彼らの一瞬の夏の輝きを、劇場でその目に焼き付けない手はない。
*1:と思っていたら、対談本『漫画がはじまる』の中で井上先生が「三井は当初バスケをさせる予定はなく、ただの不良キャラとして登場させたが、描いているうちに好きになっちゃった。笑」という趣旨の発言をしていて、やっぱりそうじゃんとなった。