33年生きてきて初めて、俄然アートづいている。
今まで旅先やフィールドトリップなど必然的な理由で美術館に行くことはあった。
そうして訪れた先でも、「絵心がないからよく分からない」という感想を持つことが多かった。聴覚優位(言語習得も耳から入るタイプ)だから仕方ないのかなぁと、諦めていた。
そんな私が、ここ最近は自発的に美術館に行きたくてしょうがないのだから、人生何があるか分からない。
読むアート
きっかけは明確に、原田マハさんのアート小説を読み始めたことだった。
最初に『楽園のカンヴァス』を読もうと思ったきっかけは、愛聴しているPodcast『映画の話をしているのに必ず脱線して違う話になるポッドキャスト』のアーカイブ(YouTube)より↓
名画の怪盗ミステリーだと思っていたけど、史実に創作のエッセンスを加えた、著者の近代美術愛に溢れる小説だった。
他にも原田さんの作品を読み進めるにつれ、美術館に行きたくてたまらなくなり、とりあえず近場のモントリオール美術館(MBAM: Musée des beaux-arts de Montréal)に行ってみた。
Don't think, feel.
以前は全ての作品をつぶさに、解説も読みながら観ていたが、それこそが美術鑑賞をつまらなくしていた。
「部屋に入ってぱっと目を惹かれた作品を中心に観る」ようにしたら、めちゃくちゃ楽しかった。
私が惹かれがちなのは、明るい色彩で、対象となるモチーフがあり、しかし写実的でないもの。時代区分で言えば近代(モダン)アートの作品が多い。
逆に言えば、前衛的な現代(コンテンポラリー)アートや古典的な宗教画は難しく感じてしまう。
料理と同じで、自分の味覚に近い料理家のレシピから入るの、大事。
モダンアートの殿堂
こうなったら(?)、近現代アートの専門であり大家のMoMA(ニューヨーク近代美術館)に行きたくなってきた。
実はMoMAには行ったことがある。でも当時は何も分かっておらず、同じタイミングで訪れたグッゲンハイム美術館やメトロポリタン美術館と記憶がごっちゃになっていたほどだ。
モントリオールーNY間は飛行機で2時間弱。実質「そうだ 京都、行こう」のノリで、弾丸週末旅行できちゃうのでは?有給取って、1日MoMAを堪能し、ブティックホテルにでも泊まって、お洒落カフェにでも寄って帰ってきちゃう??などと、半分本気で考え始めたところだ。
私とアートの記憶
カナダに高校留学していた時、美術の授業でタイルをペンチで切り貼りして、A3ほどのサイズのモザイクアートを造った。
カナダ人のクラスメイトたちの作品は、北米らしい(?)大味なタイルアートに仕上がっていた。一方私は、一心不乱でかなり細かい破片にして、桜の木の枝をカンヴァスに描いた。
完成した作品は学校のメインエントランスで、スポーツチームの優勝トロフィーなどと並べて飾られた。
当時は「留学生の作品だからだろう」と特に気に留めていなかったし、そんなことより留学生活でなかなか友達ができないことの方が一大事だった。
しかし今思えば、細部や色彩に私らしく日本人らしくもある感性が爆発していたし、多くの人の目に触れるに値する作品だったようにも思う。なんて誇らしいことなんだろう。
大切なものはすぐそこに
記憶をさらに遡れば、小さい頃はお絵描きばかりしていたこと、美術の授業も好きだったことも思い出した。
他人と比べて、無いものねだりをして、手の中にある大切なものが見えていなかった。
これからその時間を埋めるように、心ゆくままにアートを楽しんでみる。