楽しかったハワイ旅行のフライトのお供には、映画はもちろん、出発前に空港で買った平野啓一郎さんの『マチネの終わりに』を持って行きました。
又吉さんに顔認識が…笑
近年最高の読後感
本は結構読みますが、読み終えた後はまとめてブックオフに売ります。が、自分的に手元に置いておきたい本は、小さな本棚の一角に収まる分だけ残しています。
結論から言うと、この『マチネの終わりに』は暫く本棚に留まることになりました。
帯に「ずっと余韻に浸っていたくて他の本に手がつきません」というコメントがありましたが、言い得て妙。主人公の二人と、その世界観が愛おしくて抱きしめたくなります(本を)。
大まかなあらすじ
※以下特にネタバレはしておらず、帯や解説文で書かれている範囲内の情報で書いていますが、前情報一切無しで読みたい方はぜひ読後に戻ってきて下さいませ(←ちゃっかり笑)。
主人公の二人とは?って話ですよね。
本書の冒頭にそれは明確に説明されています。
ここにあるのは、蒔野聡史と小峰洋子という二人の人間の物語である。
実際、それ以上でもそれ以下でもないお話なんです。男と女が出逢い、恋に落ち、そして…という古典的なラブストーリー。
それが、主に下記3点によって比類なき恋愛純文学となっています;
- 作者・平野啓一郎さんの文才(歌手に歌上手いね、って言うような感想で大変申し訳ないのですが…本当にそうで。より直接的に私が思ったのは「久々に頭いい人が書く巧い文章を読んだ」)
- 「人生に三度しか会っていない人が最も深く愛した人である」という設定が、緻密な心理・背景描写により強烈な説得力を持って迫ってくる
- 登場人物が愛おしい
1と2に関しては読めばお分かりいただけると思うので、3に絞って掘り下げてみます。
「優秀」な二人が辿る運命
天才クラシックギタリストの蒔野と、数カ国語を操り通信記者として(危険と隣り合わせながらも)輝かしいキャリアを積む洋子。
彼と彼女を待ち受ける数奇な運命、特に洋子に対して、純粋に頭が良くいつも正しい人が必ずしも周囲から良い目を向けられないという哀しい事実を再認識しました。彼女の場合はその複雑な出自も一因としてありますが、純粋な正義感は生きづらさにも繋がると。何より彼女は、とても美しい。
しかし、本当に様々なことが起こっても、洋子は強かった。ラストに待ち受ける運命は、是非皆さんの目で。読み進めるうちに、二人を見守る視聴者であり保護者のような気分になれるのが本作品の魅力です。
蒔野の方も、実際に存在したら魅力的だろうなぁと思います。私の中で勝手に実写化すると、斎藤工さんと小池栄子さんのイメージなのですが…違う?笑
旅のお供にぴったり(かも)
帰りの飛行機で一気読みしちゃったのですが、それもそのはずこの小説は舞台をパリ/バグダッド/NY/LAと移しながら、音楽や料理・ワインの描写も魅力的(蒔野と洋子が二度目の再会を果たすパリのレストランのシーンetc.)。そんなこともあり「旅」が連想される作品です。
フライトや国内温泉宿でのんびり、あるいは何も予定のない雨の週末なんかに是非読んでみて下さいね。