でもな、悲しんでるだけじゃ何も変わないから、一歩一歩自分ができることをやっていく✊私はカナダという、女性の社会進出や男女平等が比較的進んでいる(2020年ジェンダーギャップ指数19位 ※日本121位)国にいるので、そこでの経験や感覚を発信することから始めたい。
— Casey@モントリオール在住🇨🇦 (@lifeisajanico) 2021年3月9日
先日の国際女性デーに寄せて、2021年カナダに住む日本人の30代女が思うジェンダーに関する考えを書き留めておきます。
イケメンエリートサラリーマンのジェンダー観
日本にいた時、仕事関係で折に触れて飲むメンバーがいました。
一回り歳上のA、私と同世代のBとC、そして私という顔ぶれで、私以外全員男性。
ある日夜も深まってきた頃にBがこんな風に切り出しました。
「今の時代こういうこと言っちゃダメなんだろうし、Caseyがいる前で言いにくいんだけど…やっぱり俺さぁ、女の人が偉い立場として出てきた時にどうしても尊敬できないんだよ。」
彼の業界は完全実力主義で、女性が上役として登壇する機会も多いらしいのですが、それが男性の時と同じ感情で見られないのだそう。
まぁ彼個人の感情は自由なので「そうなんだなぁ」と思って聞いていたら、Bと旧知の仲のイケメンエリートサラリーマンCが、苦虫を噛み潰したような顔でこう言いました。
「Bさぁ、それはな、今の時代そういう考え方っていうこと自体がもうヤバいんだよ…時代が変わってることに適応してないっていうのがさぁ…」
デキる人の思考回路
外資系企業でグローバル規模の実績を上げ、本社部門にスピード出世したCの言葉を聞いて、彼が優秀である所以を見た気がしました。
正直なところ、Cが個人的な感情レベルではBと同様の考えを持っている可能性はあります。
しかしCの言わんとするところは、ここ数年で女性が重責に就くこと、それに対する社会的な風向きが変わってきている。その変化を感じ取ることが出来ていれば、それありきで自分の立ち位置や身の処し方を考えるべきである。
つまりCは、女性の社会的な立場が上がることに対して良いか悪いかというジャッジではなく、実際そういう流れであるファクトとして受け止め、そのファクトに対してどう対応するかを考えているのです。
この論理で言うと、Bの前時代的な考え方はファクトより感情が優先していて、ビジネスにおいても非合理的な判断を下している可能性が高いことを露呈してしまっているのです。
他人が腹の底でどう思っていようと興味はありませんが、少なくともビジネスの場において「今の時代言っちゃアカンことを言う人」のリスクは高いのです。
森喜朗氏問題の根源
翻って、元東京五輪パラリンピック大会組織委員会会長です。
例の「女性は話が長い」発言の騒動をカナダから見つめる中で、思わず膝を打った見解がありました。
「森喜朗」と打つと「老害」とサジェストされてしまう。老いて理性的な判断と行動ができなくなった状態をそう呼ぶそうですが、皆さん誤解している。森喜朗氏は30年以上前からずっとあんな感じです。老いたからではありません https://t.co/qIqKjlhH5o
— ぬえ (@yosinotennin) February 3, 2021
確かに老害かどうか以前に、森氏そのものが時代の変化や国際社会に適応して価値観をアップデートできていない発言をするリスクが日本トップレベルに高い。
加えてオリンピックという国際的に注目が集まるイベントの主要人物に、前述のような高リスクを孕む森氏を置いた人選に、戦略性の無さと人材層の薄さを感じざるを得ません。
果たして森氏は、期待に違わず2021年現在国際社会において最も言ったらアウトである内容(ジェンダー・偏見・差別)の一つを堂々と言い放ち、恐らく最後まで何が悪かったのかよく分からないまま辞任することとなったのです。
メーガン妃の暴露から
ジェンダーの話からは逸れますが、もう一つの島国でも最近とある騒動が。
英国王室を離脱したヘンリー王子とメーガン妃がオプラ・ウィンフリーの独占インタビュー番組で「生まれてくる子の肌の色を懸念していた王室メンバー」の存在を告白しました。
ググればその時のオプラの反応が出てきますが、現代の(少なくとも)北米で一定レベル以上の教育を受けた人の間でこうした人種差別的な発言をしたら、こういう反応になるでしょう*1。
ロイヤルファミリー内での確執という話題は古今東西尽きないものですが、その閉鎖的な環境下で現代の価値観にアップデートできていない人間の発言が、大きなリスクとなり得ることを示すもう一つの例だと思います。
ちなみにこの騒動ではメーガン妃を非難する向きが強いようですが(逆に彼女の王室内でのいじめ疑惑に捜査が入るほど…)、個人的には事実無根でこんなことを暴露するうまみは無いと思います。
価値観アップデートできてますか?
時代的にダメだからダメという考え方は、もちろん全体主義が変な方向に向かってしまえば凶器にもなり得ます。
しかし、数年前にベストセラーとなった『ファクトフルネス』でも示されたように、実は世界は少しずつ確実に良い方向に向かっているという前提に立つならば、前の時代より少し賢くなった人類が共有する新しい価値観は、基本的に正しいと信じたい。
メンタリティを十年前や四半世紀前に置いてきてしまったような人たちが、悪びれもなく「今の時代言っちゃアカンこと」を言うリスクマネジメントは、現代社会において必須スキルの一つになるかも知れません。
あなたの周りにもそういう人はいませんか?
いやその前に、自分がその一人になっていませんか…?
常に自戒したいものです。
おまけ:イケメンエリートサラリーマンのその後
冒頭エピソードのCは、本社部門で異例の出世ポジションをオファーされながら、突然退職して海外留学しました。
誰もが羨むエリートコースを歩みながら、これが本当に自分のしたいことか?という問いに対する答えがNOだった模様。
「Casey、俺のこと厨二病のアホだって思うだろ」と言われたけど、全くそんな風に思いませんよ。何なら私も仕事辞めて海外移住しちゃったよ。
同世代なのにこんな言い方するのも何ですが、彼が今後どんな道を歩むのか楽しみです。
FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
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*1:このケースでは、オプラもアフリカ系アメリカ人という背景もあるかも知れません。またオプラは貧しい生い立ちですが、逆境を乗り越えて優秀な成績を収めています。