これまで何度か書いてきた通り、2020年DynamiteからBTSに入った芸人です。
彼らがアジア人として初めてノミネートされた第63回グラミー賞授賞式を、ど新規ながらドキドキして見つめた記録です。
あまりにもアッサリとその時は訪れた
東海岸時間の日曜20時〜ということで、しっかり準備していたのですが…
Eastern timeで今夜20時からねっ!とTVのタイムテーブルまで確認したのに、急にタイムライン&トレンドが忙しなくなってきたので「え、今夜ちゃうの?」と困惑しつつ慌ててYouTubeでLIVE放送にtune inしたら、なんかよく分からんままに発表された…#GRAMMYs
— Casey@モントリオール在住🇨🇦 (@lifeisajanico) 2021年3月14日
突然騒がしくなるタイムラインに「え?え??」となりながらYouTubeでLIVE配信に辿り着いたところ、ちょうどベストポップデュオ/グループ部門が発表されるところでした。
初めてグラミー賞の発表を見たのでいつもこんな感じかは不明ですが、あまりにもアッサリで拍子抜け。コメント欄で世界中のARMYが荒れているのを見て、BTSが受賞を逃したという認識で間違っていないと分かりました…。
ゴリゴリの資本主義を見た
結果としては残念ですが、この後の授賞式で単独パフォーマンスが決まっていたので、それを楽しみに気分を切り替えることに。
20時から正座して待ち構えること……3時間半後。最大のアワードであるベストレコード賞の前、この日最後のパフォーマーとしてBTSは登場したのでした(ソウルからの収録放送)。
こういった海外イベントで、世界中のARMYを利用した視聴率稼ぎのために、BTSの出番が最後まで引っ張られることが多いとは聞いていましたが……ここまで露骨とは。中盤らへんから何度も "Next""Upcoming"として名前を呼ばれては、最後までお預けでしたからね。
まぁこの点については他の議論に譲るとして、BTSおよび音楽のど素人が個人的に感じた、グラミー賞についての印象。
選考基準の妥当性
BTSがノミネートされていた部門でグラミーを受賞したのは、レディー・ガガとアリアナ・グランデのコラボ曲"Rain On Me"でした。
確かにこの曲も、デュア・リパもハリー・スタイルズも、2020年よく耳にしたのは確かです。
BTSが受賞を逃した後のタイムラインでは、ARMYの皆さんの無念の思いも噴出していました。その中で私の目を引いたのは、ARMYを降りたいと思っている様子である方のツイートです。
うろ覚えの内容ですが:
グラミー常連のアーティストは、今年のバンタン並みの活躍を何年も続けてやっと受賞している。バンタンも"Dynamite"のような曲を継続して出していくことで、初めて受賞できるかどうかというラインに立てる。
といった、客観的かつちょっと冷めた視点。
アデルなどわりとポンと受賞した印象があるので、この意見に100%賛成ではありませんが、冷静で的を射ている分析だとも思いました。レディー・ガガとか紆余曲折はあれど、長いこと第一線で活躍し続けていますもんね。
土の時代の賞レース
The Weekndがノミネートすらされなかったことや、過去にはビヨンセの騒動など、ダイバーシティについて常に批判の目が向けられているグラミー賞。
その揺り戻しか、今回の結果を見るに過度にポリコレが意識されているという声もあるようです。難しいですね…。
このダイバーシティの件については他の議論に譲るとして(譲ってばかりだな)、私はグラミーが権威や蓄積を重視する、いかにも土の時代的な価値観だなぁと感じました。
後出しジャンケンのようなことを言うけれど、ここでグラミーを獲るというのは、いかにも土の時代的成果な気がする。
— Casey@モントリオール在住🇨🇦 (@lifeisajanico) 2021年3月14日
RMの「グラミーを獲ろうと獲らまいと、僕たちにはARMYがいる。それだけでもう全てを手にしている。」という言葉に集約されるように、風の時代の“成功”を彼らがまだまだ見せてくれる。
先ほどぼんやり引用したARMYさんのツイートで指摘されているのがまさに「一定の結果を出し続けてこそ価値が認められる」という、堆積の考え方。さらに言い換えると、位置エネルギーが高い状態です。
風の時代のスター
それに対して、BTSはあの錚々たる顔ぶれのなかでも、音楽シーンにおける最大瞬間風速では全く引けを取っていなかったと思います。
アジア人初のノミネート、ARMYの応援の熱量、"Dynamite"をきっかけに一気に広がったファン層(お前もな)。
この、いわゆる「勢いがある」という言葉で表現される状態は運動エネルギーが高いと言えます。
物理で習ったエネルギー保存の法則と同様に、位置エネルギーが高ければ運動エネルギーは下がり、その逆も然り。会社の仕事しない偉いオッサンが、まさに好例です。
素人目に、グラミーは権威ある賞であることもあり、位置エネルギーの方を重視しているように見受けます。対してARMYや2020年BTSにハマった層の多くは、彼らの運動エネルギーの高さに魅力を感じているはず。
価値観が違うがゆえに、「なぜ彼らが受賞しないの?」と疑問に感じてしまうのでしょう。
いつか時代が交差する日を願って
そして言うまでもなく、運動エネルギーを重視するのがこれからの風の時代だと思います。
前述のツイートでも触れた「グラミーを取ろうと取らまいと、僕たちにはARMYの皆さんがいる。それだけで、もう全てを手にしている」というコメント(号泣)。これを聞いて彼らは既に、そして今後も風の時代の世界をリードしていく人たちなんだなぁと改めて確信しました。
グラミーなんてクソくらえ…とまでは言わない。特に悔しそうだったSUGAやジミンのようにこだわってくれていい。もちろん受賞してほしい。
でも、新時代らしい自分の軸を大切にし続けていった先に、旧来的な価値観にも評価される日が来たら。そんな歴史の目撃者になれたら、こんなに幸せなことはないと思います。
おまけ
位置エネルギーと運動エネルギーの話は、楠木建先生の名著『好きなようにしてください』から発想を得ました。
P.174〜『22. スカイマーク勤務です。同業他社にスカウトされました』の項参照。
この本何度かこのブログでも紹介していますが、私のバイブルとしてはるばるカナダにも持ってきました。
タイトルの通り、仕事にまつわる様々な読者の質問に対し全て「好きなようにしてください」の一言でアドバイスが終わってしまう楠木先生の、長い余談を楽しむ本。ウィットに富んだユーモアに爆笑しつつ、幅広く奥深い知見に唸らされ、最後に必ず「明日もがんばろう」と思える爽やかな読後感。唯一回答が「好きなようにしてはいけません」である質問も含めて、現代を生きる全ての社会人(+就活生ないし学生)も必見です。
騙されたと思って『はじめに』だけでも読んでみて下さい。そこで面白そうと思ったなら、購入して損はさせません。